戦国無双

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豊臣軍

  • 佐吉とおねね

    「こらっ! お虎に市松! 何してるんだい!」「お…おねね様!?」 佐吉とおねね 少し離れたところからその声が聞こえると、慌てた様子で虎之助と市松は俺の腕から手をといた。虎之助達が怒られているのを一瞥した後、先ほどまで捕ま…

  • 奪いたいという気持ち

     あのお方は一体何を考えているというのだ……!自分の主への妻であるが、三成は声を上げて愚か者と叫びたい気持ちで一杯だった。床が抜けるやもしれないほど力強く足音を鳴らし、秀吉の元へと足を進める。冷静を保てずに、襖を乱暴に開けると驚い…

  • 甘えでも貴方が居ないと自分は動けない

     筆の擦れる音がする。しばし止まるとふぅと言う溜息と共に、次は和紙が強く潰される音がした。ふと目を開けてみれば、頬杖を付き眉を顰めた夫。「お前さま……」「おぉ、ねねか! どうしたんじゃ?」その表情が気になり声をかけてみると、秀吉は…

  • 素直という名が無いのが憎い

     ここまで自分の性格を憎んだことがあるだろうか。素直という名が無いのが憎い「三成、こんな夜にこんな所に居たら風邪を引くよ?」「……おねね様、ですか」「あれ? 何だか覇気がないねぇ。 どうかしたのかい?」「おねね様には関係ありません…

  • 風邪の日

    頭が割れるように痛く、喉が焼けるように熱い。そう感じたのは一刻前。たいしたことなどないと放っておいたのが間違いというもの。 次第に力をなくし、遂には目の前が暗く視界を遮ってしまうのだった。風邪の日時間がどれだけ過ぎたか分からない。しかし分か…

  • ずるい想い

    三成がおねね様への想いを馳せていたのは知っていた。しかし知らぬ振りをし、おねね様にお慕い申していたのは俺の方だ。初めは母と思い、その慈愛を好いた。次第に母から女性へ変化していったのはもう遠い昔。秀吉様と共に戦い、俺たちの世話までしてくれたあ…

忍者軍

  • 気紛れ

    「小太郎! こんな所に居たんだね!」そう一際明るい声を上げたのは、女忍者でありながらにして信長の後を次ぐと言われている秀吉の妻、ねねだった。気紛れ最早秀吉の天下統一も遠くないという状況の中、混沌の中で生きる小太郎は、どうこの纏まりかけている…

  • 支えるとは

    「ねね殿、如何なされた……」そう低く小さくも力強い声がねねを呼ぶ。それを片耳に入れ、自分にしては珍しく顔を向けることをしなかった。それほどまでにも、自分は自身を保てないと言うのだろうか。こんなにも弱々しい姿をしているのを昔の自分に見られたな…

  • 暖めることなど出来ないから

    「寒くないのか」と訊ねると、目の前の女忍者は「寒くなんかないよ」などと言って笑った。その姿は明らかに何かを物語っており、そしてそれが何故だか酷く気になった。されど、言葉に出して訊ねるということはしない。要する道義などないからだ。寸刻経ったで…

  • 悪い癖

    「半蔵は笑わないの?」「何故、そのようなことをお聞きになるか」「だって戦がなくなったんだよ。 みんなが……」そこまで言うとねねは言葉を詰まらせた。自分が言いたかったことと真逆な態度の人間が目の前にいるのだから、先を言っていいものかと少しばか…

  • ただ一つの事実

    意識して来た訳じゃなかった。しかし結果的にあやつが好きな場所へ身体を進めていた。小太郎は大きな体にそぐわない早さで木を飛び移りながら移動すると、ふわりと甘い匂いがする花の綺麗に並んだ畑地へと出た。その真ん中に、華奢な身体が見える。後ろ姿だけ…

  • 居場所

    「……うぬはそれで良いのだな」「うん、もう決めたことだから」そう目の前の女が言葉を発すると、木々が騒がしい音を立てた。このまま奪い去ってやろうか。そんな感情が渦巻く。 それほどまでに女は弱々しいのだ。いつもの覇気のある瞳が幻だったかのように…

その他

  • お節介

    「ええい! 離せっ! 離さぬかっ!」「そうはいかないよ。 うちの人の所へ来た子は私の子も同然! 放っておけないよ」「それが迷惑というんじゃっ! 馬鹿め!」「気を使わないでもいいとは言ったものの、まさかこんな腕白坊主が隠れていたとはね」「坊主…

  • 紅の香り

    紅の香り「半兵衛。 ねぇ、半兵衛ったら」「何ですか、お濃様」書物を読んでいたのを邪魔された欝陶しさから、半兵衛は少し気怠い様子で生返事をした。その態度を不快に思うどころか、満足そうに艶やかに濃姫は笑う。それは魔王と呼ばれる信長の妻に相応しい…