小太郎×ねね

居場所

「……うぬはそれで良いのだな」「うん、もう決めたことだから」そう目の前の女が言葉を発すると、木々が騒がしい音を立てた。このまま奪い去ってやろうか。そんな感情が渦巻く。 それほどまでに女は弱々しいのだ。いつもの覇気のある瞳が幻だったかのように…

ただ一つの事実

意識して来た訳じゃなかった。しかし結果的にあやつが好きな場所へ身体を進めていた。小太郎は大きな体にそぐわない早さで木を飛び移りながら移動すると、ふわりと甘い匂いがする花の綺麗に並んだ畑地へと出た。その真ん中に、華奢な身体が見える。後ろ姿だけ…

暖めることなど出来ないから

「寒くないのか」と訊ねると、目の前の女忍者は「寒くなんかないよ」などと言って笑った。その姿は明らかに何かを物語っており、そしてそれが何故だか酷く気になった。されど、言葉に出して訊ねるということはしない。要する道義などないからだ。寸刻経ったで…

気紛れ

「小太郎! こんな所に居たんだね!」そう一際明るい声を上げたのは、女忍者でありながらにして信長の後を次ぐと言われている秀吉の妻、ねねだった。気紛れ最早秀吉の天下統一も遠くないという状況の中、混沌の中で生きる小太郎は、どうこの纏まりかけている…