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ゼアイズアツリー

ゼアイズアツリー「こんなところにも木は生えるんだね」そう尋ねると、私のすぐ後ろから頷く気配がした。黙って、ただ私の話を聞いてくれる。「水も何にもないのに…」すると今度は、珍しく無口なヒカゲさんが、独り言のように話しかける。「木は水が無くても…

ティーウィズミルク

ティーウィズミルク「何これ…」「ミルクティーです」「セラって、こんな濁った飲み物なんか飲むんだ…」「美味しいですよ。ヒューゴにはちょっと甘いかもしれませんが…」「ふぅ~ん…」少し自信があるように言う彼女の言葉を信じて、ほんの少しだけ口に含む…

ワンデイ

ワンデイいつもと変わらない一日。いつも通りに不定期に起きて、ぷらぷらと景色を眺めた後に、お気に入りの甘味屋へ行く。それはいつものことで、何も変わらない。「お姉さん!」「あ、麟君いらっしゃい」「うんうん、ちゃんと仕事してるね」「……どういう意…

静かで優しい時間

焦っているわけでも、怖いわけでもない。だけど少しだけ……。少しだけでも時間が止まってくれれば…。静かで優しい時間静かな夜。外からは、虫たちが優しく音色を立て、春の終わりを告げる。襖越しに見える淡い色の月が光り、二人の姿を薄く映し出した。「沖…

クロスロード

クロスロード「ねぇ、鈴花さん」「何?」「ここに『十』って言う字があるとしてね」「うん」突然読んだかと思うと、彼は筆をとり、紙の上に「十」と言う字を書き出した。「これを道に例えたとするじゃん」「うん」そして一番上に、私たちが一番誇りに思ってい…

恋する可愛い男の子!

「セーンセ!」そう呼びかけると、優しい温かな笑顔を向けてくれる。それが嬉しくて、何もないのにまた「センセ!」と呼んでしまう。「も~、悟郎君ったらどうしたの?」「んーん、別に何にもないけど~」「本当にどうしちゃったのかしら」と呟きながらも、セ…

大好き

「アカリ」そう呼ぶ声がとても優しくて、何だか照れくさい。だから前とは全く違うねとからかうように言うと照れたように彼は笑った。くしゃりとした笑顔が何だかとっても可愛く見えて、私はまたつられて笑顔になる。そんな幸せな日々。大好きな人と共に過ごせ…

青春メモリィ

 「これでいいかな、ジーナちゃん」「ええ、とっても素敵だと思いますわよ」「ティナさんって、お料理が上手でしたのね」「えへへ、ありがとー。でもそういうジーナちゃんもディアちゃんも、とっても上手だよ」「ありがとうございます」「嬉しいで…

liar man

  【     ティナ君へ      】春風が街の中を流れようとする季節となりましたね。きっと君のいる街では、まだまだ寒いのだろうけれど、元気でやっていますか?ぼくはちゃんと元気でやっているよ。今居るところでは、様々な植物が新たな生命の誕生…