ゼアイズアツリー

ゼアイズアツリー

「こんなところにも木は生えるんだね」

そう尋ねると、私のすぐ後ろから頷く気配がした。

黙って、ただ私の話を聞いてくれる。

「水も何にもないのに…」

すると今度は、珍しく無口なヒカゲさんが、独り言のように話しかける。

「木は水が無くても、日が無くても生きる。そんな強さを持っている」

そう言って、木の根の方を指さした。

目を向けると、干涸らびた木の根が大きく育っている。

どこにでもある木とは違う、とてもとても大きくて力強い根。

「強いね…」

「ああ…」

「私もなれる…かな…」

今度は小さく、きっと私にしか聞こえないような声で呟く。

すると、さっきと同じように頷く気配がした。

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以前サイトの拍手に置いていた作品です。