青春メモリィ

 

「これでいいかな、ジーナちゃん」
「ええ、とっても素敵だと思いますわよ」
「ティナさんって、お料理が上手でしたのね」
「えへへ、ありがとー。でもそういうジーナちゃんもディアちゃんも、とっても上手だよ」
「ありがとうございます」
「嬉しいですわ」

 

「やっぱりジーナちゃんは、ドクターにあげるんでしょ?」
「まぁ、ジーナ。そうでしたの?」
「イヤだ、ティナさんにディア様。ティナさんこそ、ハヤトさんにあげるって気合い入ってたじゃないですか」
「まぁ!」
「だ…だけど、ディアちゃんだってティートにあげるって言ってたもんね!」
「あら、ディア様。それは素敵なことですわ」
「…二人してこちらを見ないでくださる?」

きゃいきゃいと笑い声や、叫び声が響く、街の中に一つだけ建っている喫茶店のキッチン。
喫茶店のマスターに許可を得、3人の若き乙女が好きな人のことを想い、力を込めてケーキ作りに励んでいた。
普段は忙しい3人だが、ティナは今日だけ牧場の仕事を早めに済ませ、ジーナはドクターに朝だけ休みを貰い、
ディアに至っては一日外出許可を貰っている。
いつもは3人であまり長く話す機会がないためか、この日の喫茶店ではケーキを作りながらも、好きな人のことの話や、趣味の話など様々な話をし、盛り上がっていた。

「まぁ!では、ティナさんはハヤトさんとササ祭りに行かれたの?」
「う~ん…。本当だから反論できないけど…」
「もうこれは、お二人が結婚される日も近いですわね。ねぇ、ディア様?」
「そうね。ティナさん、ちゃんと結婚式には呼んでくださいよ」
「そ…そんな!二人とも気が早すぎるよ!そういえばこの前、見ちゃったよ!ジーナちゃんとドクターが
仲良く薬草を摘みに行ってるところを!」
「なっ…!あれは、ドクターに頼まれたから、行っただけですよ」
「好きな方を誘う、古典的なパターンかもしれませんわ」
「ディア様まで!」
「ディアちゃんだって、花火祭りの時ティートと一緒に見てたでしょ!」
「そうですよ、私も見ましたわ!」
「二人ともあまり良い趣味とは言えなくてよ…?」

初めはケーキ作りもしていたというのに、今ではスッカリおしゃべりタイム。
3人を我に返させたのは、街の母親的存在のマーサの声だった。

「まぁ!3人ともまだ、此処にいたの!?」

「「「マーサさん!」」」

開店時間に迫った喫茶店に、まだ居るかどうかを確かめに来たのだが、それが正解だとマーサは胸をなで下ろす。
マーサは未だにケーキのラッピングをしていない娘達に、「もうこんな時間よ」と時計を指さした。
3人はその指を伝うように時計の方を向くと、大慌てで叫びだす。

「わわっ!もうこんな時間だ!確かマスターは、9時でには片付けといてって言ってたよね!?」
「ええ、そうだったと思います!」
「早く、片付けませんと…」
「手伝ってあげるから」
「ありがとう!マーサさん」

わたわたと大急ぎでラッピングをし、ジーナとマーサを中心として後片付けを進めていく。
掃除慣れしている二人の勢いは、ティナもディアも驚いてしまうくらいで、それはまさに、箒が踊っていると言う例えが
一番なほどだった。

当然ジーナ達のスピードについて行けない二人は、さほど気にしないような所の掃除へと回った。
数十分後、全員の努力の甲斐あってか見事喫茶店の中は、前日マスターが掃除したよりも綺麗になった。

「よ~し、こんなものかな!」
「そうですわね」

「ジーナ、いけないことだとは分かっているんですけど…」
「はい、承知でお付き合いいたします」
「あなたも興味があるのね」
「ディア様こそ」

二人は目を合わせて、フフと笑った後、顔を赤くしてハヤト元へ向かったティナを見守るため、少しだけ二人の位置に近い場所へと移動した。

「あの…、ハヤト君!」
「ん…?ああ、お前か…」
「え…ええっと…」
「どうした?」

「ああもう!ティナさんったら何をしているのかしら!じれったいです」
「静かになさい、ジーナ。ばれてしまいますわ」

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ハヤト小説と言うよりも、ティナ+ジーナ+ディアの話になってしまいました^^;
ジーナもディアも好きなので、メインキャラよりも出しゃばり…。
友達が告白をコソリと見る、ありきたりですが、それも青春ということで!(逃)
読んで下さった方、ありがとうございました!