ワンデイ

ワンデイ

いつもと変わらない一日。
いつも通りに不定期に起きて、ぷらぷらと景色を眺めた後に、お気に入りの甘味屋へ行く。
それはいつものことで、何も変わらない。

「お姉さん!」
「あ、麟君いらっしゃい」
「うんうん、ちゃんと仕事してるね」
「……どういう意味?」
「だって、お姉さんって途中でつまみ食いとかしてそうだしね」
「そんなことしないわよ!」
「あんまり怒ると、血圧上がっちゃうよ?」
「麟君がそうさせてるんじゃない」

手を挙げて叩く真似をすると、あはは透き通るような笑い声が聞こえてきた。

「ホント、お姉さんをからかうのは面白いや」
「私は、楽しくはないけれどね」

また聞こえてくる笑い声。
いつの間にこんなに笑うようになったのだろう。
いつもと何にも変わってないはずなのに。

「じゃあ、今日はもう帰ろうかな」
「あ、もう帰るんだ」
「うん、明日符術の仕事が出来ちゃってね。あ~あ、面倒くさい」
「そう、大変なんだ。頑張ってね」
「うん。じゃあ、また暇になったら来るよ」
そう言って立ち去ろうとしたとき、呼び止められる。
「あ!麟君、ちゃんと風邪引かないようにするのよ!」
「え…?あ、ああ、うん……」

いつもと変わらない日。
だけど、昔では考えられない、優しい言葉。
自分を思ってくれている言葉。

きっと、昔とは違う、だけど変わらない一日。

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以前サイトの拍手に置いていた作品です。