「セーンセ!」
そう呼びかけると、優しい温かな笑顔を向けてくれる。
それが嬉しくて、何もないのにまた「センセ!」と呼んでしまう。
「も~、悟郎君ったらどうしたの?」
「んーん、別に何にもないけど~」
「本当にどうしちゃったのかしら」と呟きながらも、センセは笑顔で。
栗色の瞳を細くしてこちらを見る姿に、思わずドキッと胸が高鳴る。
(そんな顔、反則だ…)
最初はボクが彼女を翻弄する側だった。 ボクみたいな可愛い男の子はこの世にはいないし。
例にもれず、彼女もボクのことを目を輝かせて見ていたし、それで満足していたはずだった。
だけど、ボクに補習を受けさせようとしつこく付きまとう彼女の目には、ボクのことを可愛いとだけ見ていた他の子達とは違う、何かが…心地よい何かがあった。
「センセ?」
「なぁに、悟郎君?」
何故そんな風に感じるのか、その正体を確かめようと彼女の瞳をじっと見つめる。
ボクが見つめているからか、少しだけ頬を染めた表情がとても可愛い。
本当は見つめなくたって、何で彼女に心地よさを感じるのか分かっている。
「センセっ!だ~い好き!」
だから、自分の気持ちを精一杯口に出す。 きっと彼女には、冗談だって思われているだろう。
でも、そんなの関係ない。
だって、ボクはセンセに恋しちゃったんだから!
恋する可愛い男の子!