ニュームーン

ニュームーン(for.Doctor&Crea)

「ドクター、知ってます？」
「何を？」
「新月って英語で新しい月って書くんですよ」
「ああ、そんなことか」
「やっぱ知ってました？」
「知っているよ。これでも医者になるために英語も勉強したからね」
「へぇ、すごい」

本当は月があるはずの場所には、真っ暗闇に包まれていた。
実際には細い細い月があるはずなのに、それは私の目が捕らえることは出来ないでいる。

「月、見えませんねー」
「新月だからね」
「でも、本当は細い月があるんですよね」
「そうだね」

新月はやっぱり見えなかった。
それと同時に、一番好きな人の気持ちも見えないでいた。

「新月って目で見えるのって難しいんですか？」
「難しいことだと思うよ。簡単に見ることができたら、いいのだけどね」
「…そうですね」

目では見えない。目じゃ見えない。目だと見えることすら出来ない。
じゃあ、一体何で見えるの……？
簡単に見えたらいいのに。そうしたら、ずっと苦しい気持ちになることはないのに。

「何で見えることが出来ます…？」
「それは…、そうだな。望遠鏡とかを買えば…」

それ以上、彼の言葉は続かなかった。
小さく震える手で、口をふさいだから。

ゃあ、貴方の気持ちは…？
貴方の気持ちは望遠鏡で見えることが出来ますか…？

あの新月と同じように……。

そんなことは無理に決まっているのに、そう尋ねずにはいられなかった。